(呪術の500文字以下とかそんなネタ)
201116
「漫才しよう」という、果て無い思いつきの言葉に、傑はのった。理由の一つは退屈で、もう一つは、悟の瞳がちかちか光っていて、面白そうだったから。体育館の檀上にマイクを立て、もう一人の同級生と、複数人の下級生を招集した。あーあーあー、とマイクテストの音が響く、十八歳の秋のこと。あんまりウケてくんなかったな、薄情なやつら。悟が三分でネタ書いたからでしょ。まあいいや、おやすみ、また明日と日々は続き、永く、満ちたる時を生きた。
201108
恵もいつか悠仁を殺すのかな。
というと少し違うか。殺さないといけなくなるのかな、だ。
悠仁生きててよかったね。とは言えても、悠仁を殺さないで済むといいね。とは言えない現状だ。それは呪いにも願いにも満たない、ただのぺらっぺらな文字の並びにすぎない。
ふむ、と頬杖をつく。秘匿死刑の撤回までもっていくのは、さすがに骨が折れるだろう。僕意外にも死ぬほど頑張ってもらわないといけないくらいには。
でも僕たちみたいにならないといいね。
一、二年がじゃれ回るグラウンドを見下ろす。いやどうかな、恵は最初から腹を括っている節がある。このままじゃ心中だろうけれど。それはそれで熱烈なことだ。一度は殺せなかった僕とは違うのかもしれない。
「ははは」と笑うと気づかれた。そんなところでなにしてんの、という怪訝そうな視線に向かって、手を振る。
幸あれ。なんて地獄じゃ酷な話だ。
201008
アホみたいな顔して笑うんだよ。あの二人。特に夏油とか、イメージないだろ。私も二人の時には見たことないし。あんな顔するの、五条と居るときだけ。私が居るって気づいてわざとらしく咳払いしてる時もあったかな。笑うだろ。五条も喜怒哀楽隠さないみたいな顔して、あれで一応外面ってこと。夏油と居るときはもっとバカみたいな顔してたな。そうそう外面っていえば、夏油は上手かったな。胡散臭いくらい。取り繕ったり隠したりすんのが癖になってるみたいな。だから、五条とバカみたいな顔して笑ってたあれは、素だったと思う。思いたい、というべきかな、どうだろう。ま、隠すのが上手いせいで、あんなことになったけど。それでも五条、少しは気付いてたよ。最近元気ないよな、とか言ってさ、雑談しにくんの。ははは、あの五条が。ま、それでもまさか、隠し事があんなに膨らんでるなんて、結局わかんなかったんだけどね。
200920
傑がこどもを連れて歩く姿を見た。
え、誰それ、どこの子、産んだにしてはデカくない? とビルの屋上から、頬杖をついて見下ろす。大きな手のひらで、女の子二人の小さな手を握っていた。あーあーあー、なるほどね。と手持ちの情報がつながる。
気が狂いそうなほど穏やかな光景に見えた。年の離れた妹二人と買い物に来た、優しいお兄ちゃん、みたいな。とても村人百人殺した先にある日常には見えない。けれどまあ、なんでもそんなものだろう。あの時どうすることもできなかったくせに、こうしてこんなところにいる自分もまたそれだ。
「あ、こども」と指を鳴らす。
なんて言ったっけ。すっかり忘れていた。ああそうだ、そう。
伏黒。
200919
「あの時見殺しにしてやるべきだった」という言葉が、瞼の上まで迫っている