爆轟小ネタつめ2020

(爆轟のすごく短いネタ)

 

201015

恋ってなんだ。と緑谷にきいたところ、あたふたと両手を振り回し、しどろもどろに長々と、言い訳じみた解説をしてくれた。申し訳ないが参考にならなかったので、この手の話題といえば、と女子にきいたところ、取り囲まれた。議論の中心でやり玉に挙げられるようでいて、大いに脱線し、宇宙の一端を垣間見るにとどまった。
「結局良く分からなかった」と爆豪に報告したところ、怒っているんだか呆れているんだかわからない顔で、驚くほど大きいため息を吐きかけられた。「舐めプ」と爪先にふくらはぎを蹴られてムッとする。元はといえば爆豪のせいでこんな疑問を持って、持てあまして、うろうろとしていたというのに。
お前のせいで拗ねたからな、という意思表示でそっぽを向いていると、またため息を吐かれた。ひどいやつだ。それが好きだと言った相手に向ける態度なのか、と思うが、爆豪だと思うとそんなものだな、と納得してしまうのだから変な話だ。
「たとえば」とぶっきらぼうに爆豪が言った。「テメェがここでノーっつったら、そのうち俺はどっかの誰かのモンになる」
それでいいんか。と言われ「それは困る」ような気がした。ので、素直にそう言ったところ、鼻で笑われた。全く何なんだ。
二つ目、というように爆豪が視線を寄こして、そらした。「デクが恋人できったっつったら」といったので「めでたいんじゃないか?」と答えた。そうだろうと思うが、ヒーロー一直線の男とすぐに結びつかなかったので、疑問を含んでしまった。爆豪は静かに「困ンねえの」とささやいた。
一拍おいて、考えた。困りはしない。しなかった。
「ならいいわ」と返事があった。穏やかな声だ。爆豪ってじっとしてたら静かなんだよな、と言葉にすると当然のようなことを思った。
だいたいなんで、一緒に帰り道を歩いているのだったか。ざりざりと靴裏が砂粒を転がす音がする。
爆豪がもう一度言った。
「ノーっつったら、そのうち俺はどっかの誰かのモンになんぞ」
「それって脅しじゃねえか?」
「そう聞こえんなら、そういうこったろうな」
結局それってどういう意味なんだ。と思うが、とりあえずイエスって言っておけ、という隙が与えられているのだろうと察せられた。答えをはっきりさせる男にしては珍しくだ。
「それ、甘えていいやつか?」
本当はダメなのではないか、と自分自身に確認するようにつぶやいた。爆豪は落とし穴に蹴落とした相手を見下ろすように笑った。
「そのうち利息つけて返しやがれ」